フキ畑でつながりづくり

一般社団法人音別ふき蕗団(北海道)

釧路市音別町で特産のフキの栽培や加工品開発を通して地域活性化を図りつつ、低所得者、生活困窮者、ひきこもりの若者、障害・高齢者らに就業と社会参加の場を提供する音別ふき蕗団。

 4月中旬から今シーズンの農作業が本格化し、代表の伊藤まりさん(65歳)ら団のメンバー3人と「助っ人」8人が週1〜2回のペースで畑仕事に汗を流しています。

 助っ人のうち7人は、生活保護を受給しながら市の自立支援プログラムなどに基づいて働く人たち。年齢層は20〜70歳代と幅広く、生活保護に至った経緯もさまざまです。「ここでの仕事を気に入って、4シーズン連続で来てくれてる人もいるんですよ」と伊藤さん。

 すぐに経済的な自立にたどり着けなくとも、社会参加と交流の場があり、地場産業の活性化に貢献し、わずかでも収入を得ることが「心身の健康と生きる力の回復につながる」と伊藤さんは訴えます。

 残りの1人は、団の農場の近くに暮らす90歳代の女性。もともと夫婦でフキを栽培する兼業農家でした。高齢のため夫婦だけでは継続が難しくなり、農地を団に貸与。女性はできる範囲で団の仕事を手伝うことが、生きがいになっているようです。

 このほか、地元の知的障害者支援施設「おんべつ学園」の入居者約10人が除草作業に従事します。

5月下旬には収穫が始まり、9月までに約40トンを出荷する計画。

 新型ウイルスの影響については、屋外での作業が中心で「3密」はほぼ回避できるため「特にない」とのこと。

元看護師で農家レストランの店主でもある伊藤さん。「週に何度かここで作業し、昼食をしっかり取る」健康面のメリットも「見逃せない」と言います。昼食は伊藤さんの手づくり。栄養バランスにも配慮が行き届いています。

心配なのはフキの販路。3つの地域イベントでの販売が収益の柱でしたが、感染防止のためすべて中止に。山菜加工所や卸売市場への出荷ルートは確保できそうですが、利幅が薄く赤字も予想されます。インターネットでの直売はウェブサイトの立ち上げや運営管理などの面で課題が多く、実現の目途は立っていません。それでも伊藤さんは、「地域にとっても私たちにとっても大事な取り組み。簡単にはあきらめません」と前を向きます。 畑ではフキだけでなく、地域の元気と人の優しさ、つながりも育っています。

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