昭和村流 さりげなく見守る技

福島県昭和村

福島県の西部に位置する昭和村は人口1、198人、606世帯、高齢化率56・3%(2020年4月現在)。周囲を山に囲まれ、伝統織物の上布の原料となる苧麻やカスミソウの栽培生産が盛んな村で、冬は2メートルを超える豪雪地帯でもあります。ここに暮らす高齢者のほとんどは、数十年来のお付き合いの間柄。お茶飲みや自家栽培の野菜の交換、普請と呼ばれる地域の共同作業など、日ごろから密に交流し、互いに助け合う暮らしが色濃く残る地域です。

そんな昭和村にも、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、「3密」を避ける暮らし方が求められています。サロンなどの集いの自粛のほか、村外に暮らす子どもたちがゴールデンウィークの帰省を控えるなど、村人にとって初めての体験をすることになりました。このような状況で、民生児童委員も訪問活動を自粛せざるを得なくなりました。11人で構成する民生児童委員協議会は、見守りが必要な人のためにできることを考え、「こんにちは!民生児童委員です」というチラシを作成。できるだけ直接会うことを避け、郵便受けに投函する方法をとりましたが、担当委員の名前と電話番号が記載されているので、心配ごとを直接相談することができます。

さらに、民生委員児童委員一人ひとりも、それぞれ工夫をして見守り活動を行っています。五十嵐純子さんは、チラシに加えて、おかず一品と手書きのメモを添えて置いていくそうです。そうすると、「来てくれたんだね、ありがとう」と電話がかかってくるので、そのときに種まきのコツを教わったり、家族の帰省の予定を聞いたり、雑談を交えて近況を聞いています。五十嵐さんは、畑仕事や草むしりをしている様子や、玄関先にゼンマイが干してあるのを見れば、頻繁に変わりはないか?と尋ねなくても元気に暮らしていることがわかるし、気になる人に会えなくても隣の家に聞けば様子はわかる、と教えてくださいました。

また、別の民生児童委員の方は、ゴールデンウィークに子どもが帰省できなかった高齢者宅の「冬囲い」を外したり、畑仕事を手伝ったり、切れた電球を交換するなど、ときには直接のお手伝いをすることもあるそうです。このように、暮らしぶりを察することで見守りができるのは、日ごろから濃厚な人づきあいを重ねてきた昭和村だからこそ。村の人たちは、感染予防のための自粛下でも、ほどよい距離を保ってお互いに見守り合い、つながりを維持していると生活支援コーディネーターの小林さや香さんは言います。

生活支援コーディネーターの小林さや香さんと和泉朋子さんは、つながる通信第7号「移動販売同行で百人と会う」(宮城県女川町)の記事を読み、さっそく村に来る移動販売を訪ねました。毎週木曜日に来る移動販売と地域の方々は長年の付き合い。それぞれの好みをよくわかった品ぞろえになっているそうです。15分程度のわずかな時間ですが、「3密」対策でお茶飲みも自粛している高齢者たちは、買いものやおしゃべりをしながらひとときを楽しんでいました。コーディネーターのお二人には、その様子がさながらサロンのように見えたそうです。

移動販売は村内数か所を巡回します。小林さんと和泉さんは他地区にも伺い、村の暮らしを支える移動販売と地域の方々の様子を取材していく予定です。

2020.9.11

 

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