ともに考え、取り組む福祉教育~コロナ禍で深まる学び~

昭和区社会福祉協議会(愛知県名古屋市)

名古屋市昭和区社会福祉協議会では障害のある当事者当事者や福祉施設・事業者、地域住民との協働によって単なる体験にとどまらない福祉教育の実践を進めてきました。

令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響によって、福祉教育実践も大きな影響を受けました。関係者が話し合いを重ね、密集や密接状態を避ける工夫をすることで授業等において「できること」を増やせるように工夫し取り組みました。

区内の私立中学校では、3年生を対象にした家庭科の授業で、生命の誕生から自分の生い立ち、夫婦で協力して子育てをすることなど、生徒が様々な視点から学びを深めることを目的に家族について考える授業を年間通して行っています。その一環に「赤ちゃんふれあい授業」があります。

これまでは、子育て中の親と子、妊婦、子育て支援活動を行うNPO法人のスタッフが学校に訪問してもらい、妊娠・出産に関する話を聞いたり交流したりする時間を持っていました。しかし、コロナ禍においては、学校側と親子の双方に不安があったのでオンラインで授業を行うことにしました。

妊娠・出産に関する話を聞いた後、Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用し、これまでの授業のように生徒4人と親子1組、進行役1人でグループワークを実施しました。赤ちゃんを抱くなど、直接的なふれあいはできなかったものの、生徒と子育て中のお母さんとの会話が活発に行われました。協力いただいた親子にとっても、自分の出産育児の経験を言語化し客観的にふりかえる良い機会となったとの感想をいただきました。

また、小学校において障害がある当事者と交流するプログラムでは、密集や密接を避ける配慮をすることで、学校に障害がある当事者が訪問し、交流や体験を実施できるよう工夫しました。

例えば、視覚障害者がりんごの皮むきをする様子を児童生徒が見るプログラムでは、手元をカメラで撮影してプロジェクターに映し出すことで児童が集まることを避け、どの児童にも見やすくなるよう配慮しました。

アイマスク体験では従来、2人一組で歩行体験を行っていましたが、コロナ禍の工夫として児童同士が接触をしないような方法を考えました。児童2人のうち1人がアイマスクをした状態でビーズに糸を通し、もう1人がアイマスクをした生徒にアドバイスをするプログラムを取り入れました。終了後、生徒からは、視覚障害があっても工夫や支援があれば多くのことができるということへの気づきや見えない相手に情報を伝える方法について考えることができたという声が多くありました。

こういった福祉体験活動を行にあたって、学校、当事者、地域住民、福祉施設・事業者などがそれぞれの状況を踏まえて話し合いながら進めていきました。その背景には、関係者の「地域福祉活動計画においてがつながりを深めていきたい」という想いが大きな力になっています。

緊急事態宣言中の学校休校の影響で授業時間が減ったことにより、福祉教育の授業時間も減ってしまい、従来どおりのプログラムは実施しづらい状況が続きました。しかし一方で、動画で障害当事者の普段の生活の様子を知るなどの事前学習や交流・体験のふりかえり、ユニバーサルデザインについて考えるなど、事後学習が充実しました。私たち職員にとってもオンラインや動画、映像機器を活用し、関係者が協力し合うことで福祉教育を実践することができたことは、収束の見えないコロナ禍でも福祉教育を継続できるという自信につながりました。

2021.4.16

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